先日、長野県上田市の点字図書館開館55周年として
「マルチメディアデイジーの概要と将来像-読みに困難を伴う方々を幅広く支援-」講演会に行きました。
講師はDAISYコンソーシアム会長 河村宏氏
 今回の講演は、本のデイジー化を行っている方、デイジーを利用されている方を対象とした専門的な内容で、素人の私には非常に難しいかったのですが、いくつか分かったことがあります。
(1) EPUB3.0公開で、より早く書籍・教科書のDAISY化ができる。
 ①EPUB(Electronic Publication)
今年、電子書籍用ファイル・フォーマット規格EPUB3.0が公開予定(5月完成で、夏ごろからiPadなどの電子書籍リーダーで活用できるらしい)。
EPUBはアメリカの電子書籍の標準規格ですが、以下の仕様から世界標準となりつつある。
・オープンソース
・フリー
・パッケージ化されたWebコンテンツ
また、5月完成予定のEPUB3.0は日本語(縦書き、ルビ、禁則処理等)にも対応している。
しかし、電子書籍発行については、出版社側の電子化制作のレベルによりバグがでる。
 EPUB3.0によりDAISYコンテンツ(DAISY4という最新規格が開発される)が制作しやすくなる。

②EPUB3.0による教科書の電子化
 文部科学省では教科書の多額な事業費(調べてみました教科書のPDF化は年間約3400万円。すべて教科書出版社への随意契約)を用いてPDF化をおこなっている。また、PDF化には教科書発行から時間がかかる。
マルチメディアDAISY教科書は教科書PDFからテキスト・画像を抽出しいくつかの変換をかけて、DAISYツールで制作される。
 出版社の制作段階で、EPUB3.0化=DAISY化となる上、非常に安価である。

参考:教科書の電子化(リンク)
障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律
著作権法37条3項・施行令第2条

(2)北欧の事例
①ノルウェー国立図書館サーバー
 ワード、テキストデータをマルチメディアデイジー図書に変換してくれる。
②スウェーデンのOneBook OneCD・・1冊の本の後ろポケットにはデイジー図書CDがついている。

(3)スティービー・ワンダーが認めた世界のシナノケンシ
 上田市のシナノケンシは、戦前は絹糸紡績業として栄えた企業でしたが、現在は精密モーターやドライブレコーダーなどを製作する大手企業です。
 私も地元にいながらよく知らなかったのです(申し訳ありません)、世界を代表するDAISY規格のデジタル録音再生機メーカーで、プレックストークPTR1(商品名)はアメリカのスティービー・ワンダーが絶賛し、レイチャールズに勧めた製品。

 リンク プレックストーク

 昨年、財団法人日本障害者リハビリテーション協会を訪問しました。
マルチメディアデイジー教科書を実際見せてもらいました。
 リンク デイジー教科書の可能性

 以上が講演を聞いて分かった点です。

 電子書籍の分野は、今後益々進化していくと思われます。
 今、困っている事を情報化でサポートできるのであれば、早く実行していくこと。
 情報分野は、数か月で飛躍的な進歩をしてしまうことがあります。
 
 本日、県議会議員の清水純子さんが県議会一般質問にて発達障害の支援について「デイジー教科書」の普及について県の考えを聞いていました。
 県はワーキンググループで検討するという答弁をしていました。
 阿部知事は、今年度予算に、年齢を問わず、幅広い発達障害支援に取り組む予算と部局内を横断的に行う部署の設置を行いました。これは大変画期的です。
 しかし、清水さんの指摘にもあったとおり、発達障害支援を検討する委員会が2通りあるなど、重複しそうな委員会が多いことはマスコミ等からも指摘・懸念されていいます。
 
 将来が明るくなる道をぜひ、示していただきたいと思います。

 デイジー(DAISY= Digital Accessible Information System)とは、
デジタル録音図書の国際標準規格である。音声データの構造化と、音声と活字・画像データ等の同期再生を主な特徴とする。主に視覚障がい者のためのデジタル録音図書の作成、および識字障がい者(ディスレクシア)・学習障がい者等のためのデジタルマルチメディア図書の作成に使われている。この規格に基づいて作られた録音図書はDAISY図書、DAISY録音図書、あるいはマルチメディアDAISY図書などと呼ばれる。(出典:ウィキペデイア)
 視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためにカセットに代わるデジタル録音図書の国際標準規格として、50カ国以上の会員団体で構成するデイジーコンソーシアム(本部スイス)により開発と維持が行なわれている情報システムを表しています。DAISYコンソーシアム公認のオーサリングツールを使ってデジタル図書を作ることができ、専用の機械やパソコンにソフトウェアをインストールして再生をすることができます。国内では、点字図書館や一部の公共図書館、ボランティアグループなどでDAISY録音図書が製作され、主な記録媒体であるCD-ROMによって貸し出されています。(出典:財団法人日本障害者リハビリテーション協会DAISY研究センターHPより)