今月、長野県と長野県民生児童委員協議会はパンフレット『民生委員会活動と個人情報の取扱いガイドライン』を発行しました。
 私は他の都道府県では例を見ない、画期的な取り組みであると高く評価しています。
 平成17年の個人情報保護法施行に合わせて、すべて地方自治体は、個人情報保護条例を整備しました。これによって、民生児童委員の活動に支障をきたすようになりました。具体的には、市町村からそれぞれの地域で活動する民生児童委員の方々に、個人に関する必要な情報が原則として提供が制限されたことです。
 なぜか?
 法律では、個人情報の持ち主は、本人である。だから、個人情報を他者が取り扱う場合は『本人の同意』を得ることを大前提にしているからです。
 
 1.本人から個人情報を収集する際
 2.地方自治体が保有している個人情報を目的外に利用する場合や第3者に提供する場合
利用目的などを明示した上で本人の同意が必要となります。
 
 ガイドラインでは?
 
 1.について:包括的な同意を得ること・・市町村が個人情報を取得する際に、利用について民生児童委員にも情報提供する場合があることを明記すること。
 民生委員が収集する場合、想定される提供先や利用目的を考えられる限り明記する。
 2.について市町村個人情報保護条例に、目的外利用、第3者提供を可能とする規定を設ける(=改定する)。
 ここは非常に重要な内容です。
 ガイドラインでは具体的に三重県伊賀市、大阪府池田市の条文の例をあげて説明しています。
 伊賀市の場合
  本人以外に提供することが明らかに本人の利益となるとき、目的外利用や第3者提供できるとして、
 ・大規模災害に備える場合、
 ・認知症による徘徊に備える場合、
 役所があらかじめ決めた方に個人情報を提供することができる。
 ※どの市町村の条例にも、目的外利用や第3者提供の例外事項は明記されています。
 例えば上田市個人情報保護条例では、以下の場合が例外事項として目的外利用や第3者提供ができるとなっています。
 (1) 本人の同意があるとき。
 (2) 法令等の定めがあるとき。
 (3) 緊急かつやむを得ない理由があるとき。
 (4) その他実施機関が審査会の意見を聴いて公益上特に必要があると認めるとき。
 それでは、上記(3)(4)において、この条例の施行規則には具体的にどんな場合なのか、というと明記されていません。
 池田市の場合
 高齢者の安否確認に関する条例が制定されています。ここでは民生委員が名簿を作成し安否確認団体(社格福祉協議会)と共有することを規定しています。

 民生委員の皆さんが望むこと
ガイドライン発行に先立って、民生委員から要望の多かった提供を受けたい個人情報について
 ・要援護高齢者の情報
 ・災害時要援護者の情報
 ・ひとり暮らし高齢者の情報
 ・障がい者の情報
 ・要援護者に関する施設入・退所、転入・出情報 がアンケート調査等で明らかになっています。

 国からの通知・・県は市町村に周知しかできない?
 要援護者の情報共有や安否確認が円滑にできるよう平成19年厚生労働省は、「市町村は民生児童委員に対して、必要な情報を提供し、平常時における民生児童委員の活動に支障がでないよう配慮願いたい」との通知を出しています。
 
 上記の伊賀市の事例で非常に重要な内容と大きく表示したのは、個人情報保護条例はその市町村の法律であり、県は国からの通知を市町村に周知や助言はできるけれども、指導などできない点にあります。
 
 市町村はどう考えるのか?

 ガイドラインにおいて、
 市町村と民生委員との連携を図って頂きたい
 そして、
 民生委員が活動しやすいように、職務が遂行できるようにするためには、
市町村からの情報提供が不可欠であることを
 県は、民生児童委員を指揮監督する立場(民生委員法第17条)から、実施機関である市町村に訴えています。

 また、ガイドラインでは冒頭に民生児童委員の守秘義務 
 後半には、紛失・漏洩しないために個人情報の適正な管理について触れいています。
 
 高齢者の所在不明事件が社会問題となった時期、
昨年9月議会において、私は、市から民生児童委員に提供される個人情報について質問をいたしました。
その時の答弁は
「市から民生児童委員に情報提供をするケースとしては、個々の相談ケースの場面におきまして、その支援に必要な範囲内の個人情報を提供するほか、敬老祝い金、介護慰労金支給事業や緊急通報装置設置事業の実施に当たり、その業務上の必要性から対象者名簿を提供することがございます。このほかは、本人の同意があるとき、法令の定めがあるとき、緊急かつやむを得ない場合、これらを除きまして個人情報保護法により個人情報は提供しておりません」でした。

 日常の支え合いが、いざという時に力を発揮することを、この大震災を契機に改めて感じております。


 そのためには、地域の民生児童委員の方々が活動しやすい環境が必要です。 

 行政の個人情報の提供のあり方について今後もしっかり取り組んでいく決意です。 
 
 リンク 長野県HP「民生委員活動と個人情報の取扱いに関するガイドライン」について